就労支援という一見地味に思える分野で、着実に売上と利益を伸ばし、ついには上場まで果たした企業があります。その名はココルポート。障がいのある方の「働きたい」を支える事業を展開しながら、営業利益率は業界トップクラス。全国100拠点超を展開し、売上成長率も年間2ケタを維持しています。
障がい者雇用の義務化、福祉ニーズの増加、安定した公金報酬――。外部環境の追い風に加え、同社は独自の支援体制と経営効率の高さを武器に、着実に市場ポジションを拡大中。上場後も高利益体質を維持し、自由な資金調達環境を得た今、その成長ストーリーはまさに加速期を迎えています。
この記事では、そんなココルポートのビジネスモデルの実態、財務状況、競合優位性、そしてテンバガー候補としての可能性を、わかりやすく分析していきます。
ココルポートのビジネスモデルと成長性分析
近年、障がい者の就労支援サービスを提供する企業が注目を集めています。その中でも、2023年に上場を果たしたココルポートは、今後の成長が期待される企業の一つです。本記事では、ココルポートのビジネスモデルの特徴と、成長性について詳しく解説します。
就労移行支援とは?ココルポートの基盤事業

ココルポートは、障がいを持つ方々に対し、一般就労を目指すためのサポートを提供する「就労移行支援」を主軸とした事業を展開しています。これは国の障害福祉サービスの一環で、利用者は最大2年間、職業訓練や実習、面接対策などの支援を無料または低額で受けることができます。
企業は、この支援サービスの提供により、行政から報酬(給付金)を受け取る仕組みとなっており、ココルポートもこの報酬を主な収益源としています。

就労移行支援は、障がいやメンタル面の不調により就労が困難な方が、一般企業への就職を目指すためのトレーニングを受けられる福祉サービスです。これは国の制度に基づく「障害福祉サービス」のひとつで、都道府県や市区町村が指定・監督しています。
対象者は18歳~65歳未満の障がい者手帳を持つ方、もしくは医師の診断・意見書で利用が認められた方です。
サービス内容
事業所(=支援施設)では、以下のような支援を提供します:
- 生活習慣の改善・安定
規則正しい通所の支援や、健康管理に関するアドバイスを行います。 - 職業訓練(PCスキル・事務作業・軽作業など)
利用者の希望や能力に応じたスキルトレーニングを実施します。 - 企業実習・インターンの機会提供
実際の職場での実習を通して、就職に向けた経験を積ませます。 - 履歴書作成・面接練習などの就職支援
キャリア相談や応募書類の作成支援も行います。 - 就職後の定着支援
就職後の悩みや人間関係のトラブルなどに対応し、職場定着をサポートします。
ビジネスモデルの収益構造

この事業は、利用者からではなく、行政から給付金を受け取る形で成り立っています。
ココルポートのビジネスモデルは以下のように構成されています。
- 利用者数の拡大 = 売上増加
就労移行支援は1人あたりの報酬が決まっているため、支援拠点を増やし、利用者数を増やすことでスケールアップが可能。 - 支援の質の向上 = 定着率向上 & 評価加算
利用者の就職率や就職後の定着率によって、報酬に加算が付く仕組みもあります。支援の質を高めることで、単価の向上も見込める。 - 固定費型の事業特性
人件費や拠点の家賃など固定費が多いため、損益分岐点を超えた後は、利益率が急激に改善する傾向があります。
主な収入源
- 障害福祉サービス報酬(国・自治体からの給付)
- 利用者1人あたりの1日単価 × 通所日数
- 就職率や定着率に応じた加算報酬もあり
このため、売上は「利用者数 × 支援日数 × 単価」で決まります。
- ストック型に近い安定収益
- 人材集約型のモデル
- 開所後、黒字化までに時間がかかる
利用者が一定期間(最大2年間)通所するため、売上の予測が立てやすく、収益が安定しやすい構造です。また、支援員(生活支援員、職業指導員、就労支援員など)を多数抱える必要があるため、人件費の占める割合が高いのも特徴。新規開設の場合、一定数の利用者が集まるまでは赤字が続くケースが多く、拠点拡大には資金力と採用力が必要です。
- サービス品質(支援の質)
- 職員の確保と教育
- 行政との関係構築
利用者の満足度や就職成功率が評判に直結し、口コミや紹介につながります。支援員のスキルや対応力が、サービスの質と事業の継続に直結します。自治体との連携や法令遵守も不可欠です。定期的な監査・報告業務にも対応できる体制が求められます。
市場としての魅力

日本では障がい者の数が年々増加傾向にあり、就労支援のニーズも拡大しています。法定雇用率の引き上げにより、企業側の障がい者採用ニーズも増加中です。国が制度として支えているため、一定の社会的安定性があるビジネスです。
就労移行支援は、障がいを持つ方の「働きたい」という想いを支援する、社会貢献性の高いビジネスです。一方で、人的リソースや行政制度との整合性など、運営には高い専門性と誠実さが求められます。
うまく運営すれば、社会的意義と安定収益を両立できるビジネスモデルといえるでしょう。
ココルポートの強みと差別化ポイント

ココルポートは全国に拠点を展開しており、2024年末時点で70拠点以上を構えています。都市部だけでなく、地方にも拠点を設けることで、障がい者支援の地域格差を埋める役割も果たしています。
また、独自のカリキュラムや、ITスキル・クリエイティブ系の訓練など、多様なニーズに応える支援内容が評価されており、競合との差別化につながっています。
ココルポートの財務状況と将来展望

障がい者の就労移行支援を手がけるココルポートは、2024年のIPO以降、投資家から注目を集めている企業です。ココルポートの財務状況を確認しつつ、将来的な成長の可能性について考察していきます。
直近の財務ハイライト(2024年時点)
ココルポートの2024年3月期決算では、売上・利益ともに堅調に推移しています。
- 売上高:約80億円
- 営業利益:約5億円
- 営業利益率:約6.3%
売上高は前年比で20%近く増加しており、拠点数の増加と利用者数の拡大が貢献しています。利益面でも安定しており、黒字基調を維持しています。
財務構造の健全性
ココルポートは創業以来、着実に収益体質を強化してきました。主なポイントは以下の通りです。
- 自己資本比率:約60%
財務的な安定性が高く、倒産リスクは低いと評価できます。 - キャッシュフロー:安定した営業キャッシュを確保
国からの給付金が主な収益源であるため、入金の安定性も高いです。 - 有利子負債:少額で保守的な経営姿勢
成長企業でありながら、借入に依存せず自己資金で拡大を進めています。
これらの数値から見ても、財務は非常に堅実な構造といえます。
成長ドライバー:拠点拡大とサービス多様化
ココルポートの成長戦略の柱は「拠点数の増加」と「サービスラインの強化」です。
また、障がい者支援にとどまらず、就労定着支援や企業向け研修事業など周辺サービスの拡充にも注力しています。これにより、1人の利用者に対するLTV(顧客生涯価値)を引き上げることが可能です。
ココルポートがテンバガーを目指すうえでの障壁
ココルポートがテンバガーを目指す上での障壁はなんでしょうか?リスクと懸念点を解説していきます。
公金ビジネスはインフレに弱い?

公金ビジネス(障害福祉サービスなど)は、収益の単価が国により固定・上限が定められているため、以下のような問題があります。
- 物価や人件費が上がっても、報酬単価は簡単には上がらない
- コスト増加分を価格転嫁できない
- 報酬改定(単価の見直し)は3年ごとで政治的に左右されやすい
つまり、インフレ=コスト上昇に対して、売上が固定されているため利益が圧迫されやすいという構造的リスクを抱えています。
今後の成長リスクと対策

成長性が高い一方で、以下のようなリスクも存在します。
- 制度変更リスク:福祉サービスは国の制度に依存する側面が強く、報酬体系の見直しなどが利益に影響する可能性があります。
- 人材確保の難しさ:支援スタッフの質がサービス品質に直結するため、採用・育成体制の充実が不可欠です。
- 競合の増加:同業他社の参入が増える中、差別化とブランディングが課題となります。
これらのリスクに対して、ココルポートは独自の研修制度や評価制度を整備することで、サービスの質と従業員満足度を維持しようとしています。
将来展望:中長期的な成長ポテンシャル
日本国内では障がい者雇用のニーズが年々高まっており、それに対応する就労移行支援の需要も増加傾向にあります。政府も障がい者雇用の推進を明言しており、政策的な追い風が期待できます。
このような環境の中で、高品質な支援サービスを提供できるココルポートは、業界内で優位なポジションを確立していく可能性が高いと考えられます。
将来的には、既存拠点の収益性向上+新規開設による売上拡大の両軸で、年率15~20%前後の成長も視野に入るでしょう。
ココルポートは、財務的に堅実でありながら、成長性も兼ね備えた稀有な企業です。制度に守られた安定収入と、高まる社会的ニーズに対応するスケーラブルなビジネスモデルは、今後の株価上昇も期待できる要素と言えるでしょう。
「安定」と「成長」のバランスを重視する投資家にとって、ココルポートは長期投資に適した有望銘柄といえるかもしれません。
ココルポートの理論株価を計算してみる
できるだけ現場的な条件をあげてみます。これからの日本の状況を考えると爆発的に成長できるとは考えにくいです。
- 拠点拡大のペースが鈍化(拠点数の伸びが年+1〜2程度)
- 支援員の採用難や人件費上昇による営業利益率の低下
- 報酬制度の見直しや行政加算の減額など、制度的リスクの顕在化
- 成長よりも安定重視の経営戦略に移行
年平均成長率:約3.9% と仮定すると
年度 | 想定FCF(百万円) | 増加率(前年比) | 想定根拠 |
2025 | 500 | +8.5% | 拡大余地あるが投資圧迫 |
2026 | 520 | +4.0% | 営業CFは維持、投資増加 |
2027 | 540 | +3.8% | 成長は緩やかに継続 |
2028 | 560 | +3.7% | 効率化で微増 |
2029 | 580 | +3.6% | 拡大鈍化、FCF横ばい圏 |
• FCFは増加傾向にあるものの、年間20〜30億円規模の売上に対して数億円レベルにとどまる
• 大規模な資本政策(M&A、配当強化、自己株取得など)には慎重なアプローチが必要
• 株主価値の創出には、利益率改善や非連結事業の成長がカギ
「安定配当+リスク管理の強い福祉企業」としての評価軸が強くなり、バリュー株的な見方がされる可能性もあります。
この仮定でDCF法による理論株価を算出してみると
1株あたり約3,897円
となりました。
詳しい計算の方法はこちらをどうぞ

現在の株価から考えると2倍程度の株価にはなりそうです。
成長性の評価:テンバガー候補となり得るか?
テンバガー(株価10倍)を目指す企業に求められるのは、明確な成長市場と、それに応えるスケーラブルなビジネスモデルです。
ココルポートは
- 障がい者雇用の社会的ニーズの高まり
- 行政支援を受けた安定した収益モデル
- 拠点拡大による利用者数の成長余地
といった点で、大きな成長ポテンシャルを持っています。
ただし、制度改正リスクや人材確保の課題など、福祉業界特有のリスクも存在します。これらを適切にマネジメントしながら拡大路線を継続できれば、中長期での株価成長も十分に期待できると考えられます。
ココルポートは、社会課題の解決と収益性を両立したビジネスモデルを持つ企業です。日本国内における障がい者雇用支援の需要は今後も増加が見込まれており、それに対応する形でココルポートの成長余地も広がっています。
「社会貢献×成長性」を兼ね備えたココルポートは、投資対象として今後注目が集まる存在になるかもしれません。